離婚した妻が児童扶養手当を受給している場合、養育費を減額することはできませんか?

執筆者:弁護士宮崎晃

男性数年前に妻と離婚しました。

当時、お互いの収入を基準とする「算定表」というものに従って養育費の額を決めたのですが、元妻は離婚後、私からの養育費とは別に、児童扶養手当等の公的扶助を受け取っているようです。

元妻がこのような手当を受け取っている場合でも、私は今までどおりの養育費を支払わなければならないのでしょうか。

 

 

役所等での手続のイメージ公的扶助による収入等は当事者の収入として加算されないため、児童扶養手当の受給により養育費は減額されません。

養育費は、

① 義務者(子どもと別居する親)及び権利者(子どもを養育監護する親)それぞれの基礎収入を認定

② 父母双方に子の生活保持義務があるとの前提で、子が義務者と同居していると仮定した場合の子の生活費を算定

③ 子の生活費は、父母それぞれが負担能力に応じて分担すべきであるとの前提で、義務者及び権利者の基礎収入の割合で按分し、義務者が支払うべき養育費の額を算定する

解説する女性のイラストというような手順を経て算定されますが、簡単にいえば、①で認定された基礎収入額に基づき、②や③の諸事情を加味して簡易迅速に養育費の合計額を導くことができるにしたものが「算定表」です。(もっとも、協議による場合等、算定表によらない養育費の額を定めることもできます。)

子どもを監護養育する親は、児童扶養手当、特別児童扶養手当、児童手当等の公的援助を受けることができます。

しかし、扶養義務については私的扶助が優先され、公的扶助は私的扶助の補充的な役割を担います。

この理由から、児童扶養手当や児童手当などの公的援助(扶助)を養育費算定にあたっての収入に加算するのは相当ではありません。

すなわち、あくまでも子を扶養する親の収入による援助(扶助)が前提となり、児童扶養手当等はその補助的な位置づけであるといえます。

以上のことから、離婚後、子どもを監護養育している親が児童扶養手当等の公的援助を受け取っていたとしても、養育費は減額されません。

もっとも、養育費を支払う義務者の収入が少ないような場合には、権利者が公的扶助を受けることを考慮して養育費の額が調整されることもあるかと思います。

 

 

児童扶養手当を受給している場合の養育費のポイント

児童扶養手当を受給している場合の養育費のポイントについて解説いたします。

合意の有無がポイント

離婚後の養育費の減額が認められるかは、養育費の合意があったか否かが大きなポイントとなります。

養育費についての取り決めがあった場合、簡単にはその額を変更することはできません。

養育費を変更できるのは、裁判実務上、「事情の変更」があったと認められる場合となります。

この事情の変更の具体例としては、元妻が再婚して子どもを再婚相手の養子に入れたような場合となります。

事情変更について、詳しくはこちらをどうぞ。

しかし、離婚する際、特に養育費の取り決めをせずに、離婚してから一定の金銭を支払っているというケースがあります。

この場合、養育費の合意があったか否かが争点となります。

例えば、合意書を交わしていなかったとしても、離婚後何年も毎月定額を支払っていた場合、養育費の額についての合意があったと認定される可能性があります。

デイライト法律事務所宮崎晃しかし、養育費をたまにしか送金しない、しかも、額もバラバラ、という事案では、そもそも養育費についての合意がなかったのではないかと考えられます。

ご質問のケースでは、算定表に従って養育費の額を取り決めたとのことです。

そのため、口頭であったとしても、一応、養育費についての合意があった可能性が高いと思われます。

しかし、取り決めの具体的な内容しだいでは、合意が認められない可能性もありますので、当時の具体的な状況について、専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

 

交渉自体は可能

上記のとおり、児童扶養手当は公的扶助であり、仮に家裁に調停申し立てた場合、調停委員からは「減額は難しい」などの発言があるかもしれません。

また、調停で話し合いがつかない場合、審判手続きに移行しますが、そうすると養育費の減額は認められない可能性が高いと思います。

このように、裁判所での手続きでは、不利な結果が予想されます。

しかし、相手方との任意の交渉は可能です。

相手方が減額に応じてくれれば、それが適正額を下回っていたとしても、問題はありません。

したがって、ご質問のケースでは、なるべく裁判所での手続き(調停等)を避けて、まずは相手方と直接話し合って見られることをお勧めいたします。

 

合意書の締結

養育費相手方が養育費の減額に応じてくれた場合、養育費の減額についての合意書を交わしたおいたほうがよいでしょう。

合意書がないと、後々トラブルになることがあります。

例えば、養育費の額を下げることに同意してくれたので、減額して支払っていたら、数年後、相手方が「未払い養育費を支払え」といってきた場合、合意の存在について、言った言わないの争いとなります。

その場合、減額の合意を立証できないと、裁判では負ける可能性があり、多額の未払い養育費の支払いを命ぜられます。

このようなことを避けるために、相手方が養育費の減額に応じてくれた場合、合意書を作成して締結しておくと安心です。

養育費変更の合意書については、当事務所のホームページから記入例のダウンロードが可能です。

ダウンロードはこちらからどうぞ。

もっとも、最適な合意書の内容については個々の案件によって異なるため、あくまで参考程度にとどめ、専門家の助言のもと作成されるようにしてください。

 

 



「養育費」についてよくある相談Q&A


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