給与所得に加えて配当所得がある場合の婚姻費用はどうなる?

執筆者:弁護士 小村良之

弁護士の回答

単に給与所得に配当所得を加えた収入金額が婚姻費用算定の基礎になるわけではありません。

配当所得ついては職業費が不要なため、職業費が不要であることを踏まえ、収入を算出する必要があります。

 

婚姻費用の算定と配当所得の特殊性

婚姻費用を算定する際、その前提として婚姻費用算定の基礎となる収入(基礎収入)を算出する必要があります。

基礎収入は、総収入から公租公課、職業費(給与所得者が就労するために必要な出費)、特別経費を控除して算出されます。

しかし、配当所得(利子所得の場合も同様)を得るためには職業費が不要であるため、配当所得がある場合の婚姻費用の算定には特別な考慮が必要となります。

 

 

基礎収入の具体的な計算方法

過去の審判例を参照すると、給与所得に加えて配当所得がある場合の婚姻費用の算定方法としては以下の3つの方法が考えられます。

具体例では、給与所得が600万円、配当所得が100万円ある方について、実際に基礎収入を算出してみましょう。

給与所得者の基礎収入割合に0.2を足した値を基礎収入割合とするもの 給与所得者の基礎収入割合に0.2を足した値を基礎収入割合とするもの

この方法は、配当所得について給与所得者の基礎収入を参照した上、職業費が総収入に占める割合に相当する0.2を加えた値を配当所得の基礎収入割合とする方法です。

配当所得と給与所得それぞれにつき基礎収入を計算した上、これらを足し合わせた金額を基礎収入とします。

具体例 給与所得が600万円、配当所得が100万円ある場合の、基礎収入の計算例

給与所得:600万円
配当所得:100万円


給与所得についての基礎収入:222万円(= 600万円 × 0.37 )
配当所得についての基礎収入:62万円(= 100万円 ×( 0.42 + 0.2 ))
総収入に対する基礎収入:284万円(= 222万円 + 62万円 )

 

0.8で割り戻す方法 0.8で割り戻す方法

この方法は、配当所得に職業費がかかっていないことを踏まえ、配当所得を0.8で除すことにより配当所得を給与所得に置換する方法です。

配当所得を0.8で割り戻した後、これを給与所得に加え、給与所得者の基礎収入割合を乗じることで基礎収入を算出します。

具体例 給与所得が600万円、配当所得が100万円ある場合の、基礎収入の計算例

給与所得:600万円
配当所得:100万円


配当所得を0.8で割り戻した金額:125万円
上記と給与所得の合計:725万円
総収入に対する基礎収入:261万円(= 725万円 × 0.36 )

 

基礎収入割合を62%~53%とする方法 基礎収入割合を62%~53%とする方法

公租公課及び特別経費だけを控除した場合に基礎収入割合が62%~53%になることに照らし、配当所得にこれを乗じて配当所得についての基礎収入を算出します。

その上、給与所得についても基礎収入を算出し、これらを足し合わせたものを総収入に対する基礎収入とします。

具体例 給与所得が600万円、配当所得が100万円ある場合の、基礎収入の計算例

給与所得:600万円
配当所得:100万円


給与所得についての基礎収入:222万円(= 600万円 × 0.37 )
配当所得についての基礎収入:53万円~62万円(=100万円 × 0.62 ~ 0.53 )
総収入に対する基礎収入:275万円~284万円(=222万円 + 53万円 ~ 62万円)

給与所得者の基礎収入割合

給与収入(万円)
~100 42
~125 41
~150 40
~250 39
~500 38
~700 37
~850 36
~1350 35
~2000 34

 

 

どの計算方法を用いるか

弁護士上記のとおり、3つの方法のいずれを用いるかにより、異なる基礎収入が算出されることになります。

もっとも、3つの計算方法のうちいずれの方法を採用するかという点について、裁判所の取り扱いが決まっているわけではありません。

そのため、相手方に対し、自らに最も有利な計算方法を使用し算出された収入を基に婚姻費用を決めるよう働きかけることが重要です。

執筆者:弁護士 小村良之

 

 


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