児童手当や児童扶養手当をもらっていても養育費は減額されないの?

執筆者:弁護士 勝木萌

養育費について質問です。 養育費について質問です。

離婚した元妻が、児童手当や児童扶養手当をもらっています。

養育費は減額されませんか?また、元妻が実家の援助を受けた場合はどうでしょうか?

 

 

 

弁護士の回答

児童手当や児童扶養手当をもらっていることを理由に養育費は減額されません。

また、同居親が実家からの援助を得ていたとしても、養育費は減額されません。

 

児童手当と児童扶養手当とは

養育費児童手当や児童扶養手当を受給している同居親(子と同居していて監護している親)は、原則として養育費及び婚姻費用算定の基礎となる収入に児童手当や児童扶養手当の金額は加算されません。

すなわち、児童手当や児童扶養手当の受給を根拠に養育費や婚姻費用が減額されないということです。

児童手当は、
「子ども・子育て支援の適切な実施を図るため、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的」として支給されます。

また、児童扶養手当は、
「父又は母と同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もって児童の福祉の増進を図ることを目的」として支給されるものです。

児童手当と児童扶養手当は、児童(子)の福祉という児童(子)だけを対象にした政策目的の実現のために、私的扶助を補うものとして支給されるものであるため、家族の生活費とは別個のものということになります。

したがって、児童手当及び児童扶養手当は、原則として、これを婚姻費用や養育費分担のための算定の基礎となる収入とすべきではないと考えられます。

家庭裁判所の審判例も、以下のように児童手当や児童扶養手当の受給によって、その手当を婚姻費用や養育費の基礎の算定となる収入に加えるべきでないとしています。

判例 手当を算定となる収入に加えるべきでないとした裁判例

「相手方は、①申立人が△△区から児童育成手当及び児童扶養手当を受給していること(中略)を考慮すべきである旨主張する。しかし、前者(①)は生活保持義務に基づく婚姻費用分担金とは異なる観点からの公的支給であるから、婚姻費用分担金を算定するに当たり児童育成手当及び児童扶養手当を申立人の収入と捉えることは相当といえない」

【東京家審平成27年6月17日】

なお、養育費の減額をお考えの場合は、詳しくはこちらからどうぞ。

 

 

実家からの援助

お金実家からの援助は、婚姻費用や養育費の算定の基礎となる収入には加算されません。

婚姻費用や養育費の分担は、将来の定期的なものであるため、基本的に一時的な収入や偶然の収入は考慮されません。

実家からの援助も、実家の厚意に基づく贈与であり、必ずしも永続するものではないし、受贈者の利益のみを目的とするため、双方当事者いずれの収入としても考慮されません。

もっとも、婚姻費用や養育費を支払わなければならない義務者が、実家の援助に頼って稼働していない場合があります。

その場合であっても、この義務者の収入については、実家からの援助の金額ではなく、その潜在的稼働能力(実際に働くとしたらどのくらい稼げるか)をもって収入を擬制することになります。

 

 

その他(高校無償化による)の養育費への影響

政策により高等学校費用が無償化されたことにより、公立学校費が考慮されている婚姻費用・養育費についても無償化の分の費用がかからなくなったとして、減額されるのではないかとも思われます。

しかし、裁判例は、婚姻費用・養育費の額を定めるにあたって考慮すべきものではないとして、高校無償化による婚姻費用や養育費の減額を否定しています。

判例 高校無償化による婚姻費用や養育費の減額を否定した裁判例

「公立高等学校の授業料はそれほど高額ではなく、長女の教育費ひいては相手方の生活費全体に占める割合もさほど高額ではなく、…教育費ひいては相手方の生活費全体に占める割合もさほど高くないものと推察されるから、授業料の無償化は、(義務者が)負担すべき婚姻費用の額を減額させるほどの影響を及ぼすものではない。また、これらの公的扶助等は私的扶助を補助する性質のものであるから、この観点からも公立高等学校の授業料はそれほど高額ではなく、長女の教育費ひいては相手方の生活費全体に占める割合もさほど高額ではなく、…教育費ひいては相手方の生活費全体に占める割合もさほど高くないものと推察されるから、授業料の無償化は、(義務者が)負担すべき婚姻費用の額を減額させるほどの影響を及ぼすものではない。また、これらの公的扶助等は私的扶助を補助する性質のものであるから、この観点からも婚姻費用の額を定めるにあたって考慮すべきものではない」

【福岡高那覇支決平成22年9月29日】

 

執筆者:弁護士 勝木萌

 

 


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